最高裁判所第二小法廷 昭和41年(行ツ)6号 判決 1968年11月29日
松江市北田町一〇四番地九
上告人
大野賢一
右訴訟代理人弁護士
篠田嘉一郎
同市中原町二一番地
被上告人
松江税務署長
吉川共治
右当事者間の広島高等裁判所松江支部昭和三九年(行コ)第一号更正決定取消請求事件について、同裁判所が昭和四〇年一一月二六日言い渡した判決に対し、上告人から、全部破棄を求める旨の上告の申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人篠田嘉一郎の上告理由について。
上告人が訴外前田美都枝からその所有建物を代金一八〇万円で買受け訴外林宗恩および張清聯に売却した事実は、当事者間に争いなく、これと原判決およびその引用する第一審判決の挙示する各証拠によれば、上告人が右不動産を二二〇万円をもつて転売し、四〇万円の差益をあげた事実を認定しえないものではなく、原判決のこの点に関する認定判断は相当であつて、これに所論の違法は認められない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の採否ないし事実の認定を非難するに帰し、採用のかぎりでない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 草鹿浅之介 裁判官 城戸芳彦 裁判官 石田和外 裁判官 色川幸太郎)
昭和四一年(行ツ)第六号
上告人 大野賢一
被上告人 松江税務署長
上告代理人篠田嘉一郎の上告理由
原判決は売買差益金を認めたる理由に齟齬がある。
原判決は理由の冒頭に於て控訴人の本件請求が理由のないことは左の通り訂正補足する外、原判決が理由として判示するとおりであるからここにこれを引用すると解示して第一審判決の理由を全面的に引用した。
そして売買益金の部三、として原判決十六枚第八行目末尾に次の点を附加すると題して縷々判示せられたるもこれを控訴人を買主とし売主を前田美都枝としての売買代金百八十万円とすることは当事者間に争いなし、而して其不動産を其の侭時を同じくして控訴人が売価二百二十万円(これは被控訴人の推定価格なり)にて林宗恩等に転売したるものとすれば驚くべき暴利行為にして日常の取引において想像するを得ざるものなり又之を目撃したる不動産の持主前田美都枝が指を銜いて僅かに百八十万円に売る様なこともなかるべく又其の百八十万円の原価のものを暴利を支払つて二百二十万円で買受くる者もなかるべし、此の売買の真相は不動産の原所有者前田美都枝が控訴人大野賢一を介して買主林宗恩等に頼み抵当権債務を引受け支払うことを承認して貰い売価を二百二十万円に近き代金にて売却したるものと認むべきが至当なりと思う、故に代金名義にて出捐したるは林宗恩等にして其の出捐により利益を得たる者は前田美都枝なり、控訴人大野賢一はこの売買に依り実際毫も差益金は得て居らず(被控訴人提出の昭和三十八年二月二十日付証拠説明書と題する書面の第四枚目の末尾に(「右により前田美都枝が原告(控訴人大野賢一)を経て林宗恩等に売つた建物である。」)と被控訴人自身その真相を認めて居る、斯の如き売買の実情が明かなる場合には徴税庁としては売買の仲介を為したものとして仲介手数料を算定するは格別なるも売買に依り利得を得たるものと認定するは失当なり、故にこの点に関する原審の判決は理由の齟齬あるものと謂はざるべからず。 以上